姑のご趣味は喋ること。
聞き役が話を聞いていようが聞いていまいがそんなことはどうだっていい。とにかく誰かを前にして何かをしゃべっていればそれでいいのだ。さすがに誰もいないのにしゃべっているような認知症っぽい独語の症状はないにしても、なにせ喋るしゃべる喋り続ける・・・・・・。
その喋りへの執着心は凄いのである。
おかげで、しゃべりすぎて咳き込んでしまうことってある。
姑の場合、喋りがスゴい分、咳き込むのもスゴいのだ。なんとその咳き込みは〝のど仏〟が飛び出てきそうなぐらい咳き込む・・・・・・。
だからか、むせて咽てむせまくっても喋り続けるのだが、途切れ途切れで喋りにならない。が、それでも喋りを続ける姑。
その話はもう何十回も聞いたぞ!そんなに苦しんでまで話してもらう内容では無いのである。なのに、しゃべる喋る。
こんなエピソードがあった。
喋り倒して激しく咳き込んだあげく、なんと入れ歯が飛んでしまった。
( ̄ロ ̄|||)!!
たまたま聞き役があたしだったから、とんだ入れ歯を拾ったまでは良かった。しかしそこまで咳き込んだからか、その勢いで嘔吐してしまったのだ。
すかさずゴミ箱を姑の口元にもっていく私。ゲホゲホゲホゲホ〜〜〜ゴホホ〜
その嘔吐物をゴミ箱で受け止める同居嫁。ストレスとかそんなじゃなくって、もうフラフラだ。フラフラ・・・・・・。
どうしてそこまでしゃべれるんだよ?
こんな姑は、あたしに電話をかけてきた相手にだってペランペランと喋ってくれるから〝たちが悪い〟
――日は変わったある日のこと。
就寝前のダイエット体操に励んでいる私に、相変わらず風呂に入れと口うるさい姑。うっるさい姑だなあとメゲズニ体操を続けている私に電話がかかってきた。
もちろん、電話が鳴ってもナンバディスプレイの設定がない我が家の電話機では誰からの着信かはわからない。
通常、自分宛の電話はスマホにかかってくることが大半なのだが、友人知人のなかには固定電話にかけてくる人も少数ながら存在する。
相手にすれば固定電話もスマホもどっちにかけようが同じことだという感覚なんだろう。
その日、固定電話にかかってきたのは私の友人からだった。
電話の音が鳴れば反射的にとろうとする姑。
「ハーイもしもし?どちらさんですかー?」
「ああなんだ――さんなら今ね、体操してるのよー、いえね、最近体重が何キロか増えたからって汗だくでがんっばってるし」
「うんうん、そう毎日のことなんよ、そうね毎晩1時間ぐらい。風呂にも入らんと毎日痩せたいって体操してるからもう大変でね」
私の友人に好き勝手にプライバシーを喋り倒す姑の威勢の良い声に聞き耳を立てる私は、唖然としながら怒りに震えているのだ・・・・・・。
毎日はしてないだろうがっ! 一時間もやってないってばっ!
だいたい何しゃべってんだよ?
ペラペラ大げさに喋ってないで黙って取り次げばいいんだよ!
こんな姑と同居しているストレスが原因なんだろうか?
私は時折激しい頭痛に悩まされている・・・・・・ひどい時は、吐き気までもよおすほどだ。
こんなとき、市販の頭痛薬も効いてるのか効いていないのか・・・頭痛に悩まされたときは早めに寝るのが最良の対処法なのだ。
そのため、いつもより早く寝るときは「今夜は頭痛がするから早めに休ましてもらいます」と姑に報告する。もっとも、こんなことまでイチイチ報告しないとうるさい姑である。
でもこれは、裏返せば静かに寝かせて欲しいから報告するのである。
もう寝ますと言っておけば、一人にさせてくれるのが普通の風景だと思うから。
ところがどっこい、こんなときまで姑は口をふさがないのだ。
「何?頭痛いの?大丈夫?」
「はい、でも大丈夫よ。おやすみなさい」
「そう、薬飲んだね」
「うん、飲んだ飲んだ、じゃ、早めに寝るね」
「ウンウン、はやく休んでちょうだいね」
「ハイおやすみなさい・・・」
「そうね、あんたがどうかあったら私は困るよ。だからゆっくり寝るんだよ」
「はいはーぃ」
ほぅ〜っと、布団に入って数分もしないうちにコレだ。
「あ、まだ起きてる?良かった!さっ、これ!この薬飲んでみて、私が病院でもらったやつだからよく効くんだから」
「はい。でももう他のを飲んだから大丈夫だから」
「いいのいいの、飲んでみて!ほら、階段に置いておくよ」
いらんってば(;−_−)
シカとして放っておくと・・・
「ホラホラ、クスリ取りに下りておいで」
(もーーーーー)
薬だけ受け取って、また布団に横になる、ふぃ〜やれやれ。と、ぅとぅと眠くなって次第に寝入ろうとしている私。
するとまた!大きな声で私を呼んでいる。
ビクッ!(; ̄_ ̄)
「どう?治ったね?病院のクスリだからよく効くでしょう?」
あのさあ、そんなすぐに効くわきゃないだろうが!
「どう?明日は起きれそうなの?どうー?」
うるさーーーーーーい!!静かにしろーーーーー!